連載インタビュー第4回『シングル三部作の意味（1）』

第4回：シングル三部作の意味（1）

（取材・文／西廣智一）

──ここからは20周年記念シングル三部作について話を聞きたいと思います。各シングルに4曲、計12曲の新曲が用意されましたが、なぜこれらの楽曲をアルバムという形ではなくシングル3枚に分けて発表しようと思ったんですか？

AJ　リリース方法については僕が提案したんです。これは人によると思うんですけど、今ってアルバムという単位とか曲順とか、さほど意味がないような気がしていて。というのは、いくらこちらが曲順を決めてリリースしても、皆さん順番どおりに聴いてくれないというか（笑）、好きな曲から順番に聴くことが増えていると思うんです。そもそもレコードやカセットテープだったら1曲目から順番に聴くしかないし、途中で止められないみたいな緊張感もあった。僕らはギリギリその世代なんですけど、CDがメインになって以降は早送りも曲を飛ばすのも当たり前になって、最近では好きな曲を1曲ずつデータでダウンロードする。結局そういったところはアーティスト側もコントロールできないし、提案した曲順どおりには伝わらないというジレンマがずっとあったんです。

──確かにデジタル時代に突入してから、アルバムの価値というのは昔よりも下がっているのかもしれませんね。

AJ　僕はDJをやることもあって、iPhoneの中のDJソフトがBPMをもとに勝手に曲をつないでくれる機能も好きで、車の中でもよく聴くんです。ここまでくると、もうアーティストの意思って関係ないじゃないですか。そこに対して自分たちがプレゼンテーションできることはもうないんだなと、僕は考えたんですよ。だって自分もアーティストの意思を無視して音楽を聴いているわけだから。もちろんみんながみんなそうだとは思わないですけど、僕の考え方としてはそうだなと。であれば、唯一アーティスト側に自由があるとすれば、リリースする順番だけだなと気付いたんですね。だから12曲を三部作として、4曲ずつリリースしようと。その上で、どのブロックから聴いてもらうかはこちら側が選べるんじゃないかなってことなんです。だから最初の『LIFETIME???』というEPを10月に、20周年の秋から冬の間に4曲だけ聴いておいてほしいなというのが、そもそものリリースアイデアのきっかけなんです。

──なるほど。

AJ　で、「楽園」はまず最初に聴いてほしかったというのがあります。そして一番大きかったのは、4曲目に入っている「DIVERGE」という曲が20年前に作った曲だということ。「ひまわり」や「新世界」が完成した頃に「ほかにどんな曲が欲しいか？ じゃあテンポが速い曲が欲しいな」っていう感じで作った初期の曲なんです。これを20周年のこのタイミングで聴いてほしいと。あとは季節感も関係していて、「若葉の頃の」は絶対に夏の終わりじゃないと聴いてほしくないなぐらいの気持ちだった。だからまずはこの4曲をパッケージします。これから2作出ますけど、それもおんなじ感じでパッケージしていていきますと。

──そういう意味が隠されていたんですね。

AJ　はい。あと、12曲を一気に発表すると捨て曲じゃないですけど、どうしても曲に優劣が付くと思うんです。それはしょうがないことなんですけど、ただこっちの熱量はどの曲に対しても変わらないから、なんとか均等な思いで聴いてもらいたいなと。12曲をいっぺんに渡されると、後になって「この曲の良さ、ずっと気付きませんでした」みたいなこともあるじゃないですか。そうじゃなくて、この3ヶ月の間に4曲だけマスターしようみたいな、そういう気持ちですかね（笑）。まとめると、聴いてもらう曲順はコントロールできないから、1曲1曲を大切にしてもらうために、この時期に聴いてもらう曲をまずセレクトして出したっていうことですかね、このリリース形態は。

NOB　なるほどね。

BRITAIN　完璧だ。でもホントだね、12曲いっぺんに出したら1位の曲と12位の曲ができちゃうわけだから。

AJ　あとライブでも4曲だったらパッとレパートリーの中に入れられるんですけど、12曲あるとどうしても漏れる曲が出てきちゃうしね。

「第5回：シングル三部作の意味（2）」に続く。