連載インタビュー第5回『シングル三部作の意味(2)』
第5回:シングル三部作の意味(2)
(取材・文/西廣智一)
──今回完成した12曲を3枚のシングルに分けて、季節に合わせた選曲で発表していくこのリリース方法は、CURIO的にはベストということなんでしょうか?
AJ まあCURIOがというよりも……僕らは好きで音楽をやってるし、聴く音楽に対してもいわゆる一般のリスナーとは意識してなくても違うのかもしれないから必ずしも一致はしないと思うんですけど、音楽の聴き方における1つのプレゼンテーションみたいな感覚ですよね。こういうリリース方法ならもうちょっと聴いてもらえるんじゃないかな?とか、一気にたくさんの曲を出さなくてもいいんじゃないかな?とか。もちろん一度にたくさんの曲を出すのもいいんですけど、そうするとさっき言ったみたいに12位の曲ができてしまうし。
BRITAIN 12位とは思われたくないしねぇ。
AJ そこは心苦しいところがありますよね。作った側からすれば、どれも一番なわけだし。だからCURIOに対してベストというよりは、こういうやり方もあるんじゃないかなっていう1つの模索という感じですね。
──なるほど。そして今回の三部作には「LIFETIME BEGINS AT THIS POP MUSIC」というコンセプトが掲げられていますが、このフレーズにはどういった意味が込められているんですか?
AJ もともとはXTCの曲名のもじり(「Life Begins At The Hop」)なんだけど……響きがいいなと思ったんですよね。昔、何かのインタビューで言ってたような気がするけど、CURIOはロックと言われるよりはポップミュージックと言われるほうがいいかなと思ってた時期もあったぐらいなんで。まあ20年やったらこれぐらいのことを言ってもいいのかなって感じですよね。最初はイベントタイトルを付けるときにこれを思いついたんだけど、そこから三部作を作ることになって、そのフレーズを3分割したわけです。20周年っていうタイミングと『LIFETIME???』というタイトルも時間軸的に合ってるし。4曲目のタイトル「DIVERGE」には分岐点っていう意味もあるんで、そういう点でも符合するところはあったと思うんですよね。だからいい加減に付けたわけではないけど、どこか頭の中ではつながってるところもあって。ピンときたところはたぶんそういう部分だと思うんです。
BRITAIN 頭いいなぁ(笑)。
──結成初期に作った「DIVERGE」から最近の「楽園」まで、その間の20年という期間がまさに「LIFETIME」という言葉にふさわしいと。
AJ だからここから続いていく2作にも、それぞれのタイトルと収録曲に符号するところがあると思います。
──確かにそう言われると、それぞれの曲には収録されているシングルのタイトルに通ずる世界観が描かれているように感じられます。特に4曲ずつ区切って聴くと、その色合いはより強まってるように思えるんですよね。
NOB そこは意識してたよね。
AJ うん。だから逆に12曲まとめて出すってことはできなかったと思うんですね。最後のマスタリング前に曲順を決めていったときに、これは4つずつテーマが明確に分かれてるなって。ライブの曲順を決めてるみたいだったんですよ。4曲終わってここでMC、また4曲やってMCみたいに感じられたんです。
──その4曲に区切った中でも、曲順はものすごく考えられてますよね。
AJ そうですね。それこそちょっと矛盾するかもしれないけど、やっぱりループ再生したときにキレイに聞こえるようにしたくて。だから「楽園」から「DIVERGE」まで聴いて、「DIVERGE」から「楽園」に戻ったときにキレイに聞こえるような感じにしたかった。あとはシャッフルしても4曲だったら、ほぼ自分たちが考えたような曲順どおりに再生されるであろうという読みもあったよね(笑)。
──4曲だったら仮に曲順を変えたとしても、そこまで激しく優劣が付かないし。
AJ テーマがしっかりしてるぶん、曲順が入れ替わっても印象は変わらないんじゃないかな。『LIFETIME???』というパッケージはこういうものだって、みんなが思ってくれるようなものにはなると思います。
「第6回:CURIOの考える「ポップ」論」に続く。